あなたにあって私にないもの

あなたになくて私にあるもの

彼は気付いて頁の間に栞を挟んだ

彼女は気付かずに何度もキスをした

あの人は
あの時サヨナラも言わなかった
あの娘は
もうこれ以上会うことはないと知った

遠く離れてしまった彼と
遠く離れていった彼女は
何もなかったかのように
違う方向へ歩き始めた

あなたは誰かを
誰にも語らず
ずっと待っていた

彼女は彼との約束を
永遠に守り続けた
彼もまた彼女との約束を
死ぬまで貫いた

彼女は力の限り急いだけれど
もう
間に合わなかった

彼は
電話の向こうに小さな産声を聞いた

君にあって僕にないもの

彼になくて彼女にあるもの

あの人にあってこの人にはないもの

この人にあってあの人にはないもの

生まれた瞬間から死ぬまでの瞬間を結ぶ一本の糸は誰も選べはしなかった

それでも幸せを希う

生まれた時から全ては決まっていた

それでも君は生きていた

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